掘り出し物


表参道の「はいいろオオカミ」で状態の良い戦時中のランプシェードを発見。

不思議な色合いの紙製。






但し書きには「凝らせよ照明  漏らすな燈火」という防空標語。


続いて

「東京府に於ける一年間の燈火管制を行う時間表」と書かれており、一年間の日の出日の入に合わせて細かく開始と中止時間が決められていたようです。


末尾には部屋の広さと光量の関係まで補足されています。





遮光性能はもちろん抜群で、表にプリントされたカーキ色の模様がなんとも言えない雰囲気。


あえて真っ黒にはせず更にフチが波々にデザインされているのは、多分支給品ではなく他にもこういう国策式防空電燈笠が売られていたからかもしれません。

ちなみに値段は35銭。




光を閉じ込めるモノ

解き放つモノ


70年ノ時ヲ経テ我頭上二並バン











追記

凄く気になったので調べてみたら、1943年(昭和18年)頃から民間防空対策の灯火管制の一環として、長野県岡谷市で作られていたようです。

笠の上端13cm、下端22cm以上という規定があり他にもデザインがあったらしい。

しかし、信号弾より遥かに性能の優れた米軍の照明弾やレーダー、非道な無差別爆撃の下では民家の明かりはどうということはなかったらしく、国民を戦時体制に押込めてゆくのに防空演習の灯火管制は格好な手段だったという側面もあるようです。



紙製なのでなかなか現存していないかもしれませんが、調べてみるとこんなものも出てきました。
B-29が鳥のように舞っています。
とてもストレートな内容ですが、結構題材として使うことが多いようです。
敵国の爆撃機をあえてデザインにとり入れる心意気が皮肉にもおもしろいと言っていいものか。

蛇腹式のものはよくできています。
黒い布を巻かなくても、蛇腹を下に伸ばすだけで光源を隠せるという機能重視。
遊び心は今ひとつですが、これこそ想像していた戦時中のイメージでした。



これは工芸的な職人の息吹を感じます。フチの波を活かしています。


その隣にある電球はマツダ防空電球。
側面を蝋で遮断し、先端からスポットのようにしか光が出ないタイプです。


驚くべきことに、ソケットにねじ込む深さによって二段階の明かりが調整可能だということです。秀逸です。




この頃は右読みと左読みが混同していて、ついつい下のものはバカと読み間違えそうですね。

この二つもB-29を大胆にあしらったデザイン。桜とともに。

3羽のB-29が家紋のように構成され、その上には爆弾が落ちてくるという。

それに立ち向かう零戦がいてもおかしくない、、、桜がその象徴かもしれませんが、なんだか不思議な気持ちになります。
あの鳥たちはまさにこの電燈が吊られたこの家を焼き払うために飛んでくるというのに。






これが日本家屋に吊られていたんですね。昭和モダン。


これは型紙が違うようで東京の文字もあるので長野県以外でも作られていたということでしょうか。




このように予想通りたくさんの種類がありました。

とにかく戦時下とはいえ、柄にはうるさい日本人。
灯火管制の条件させ満たせば、辛い日常で少しでも晴れやかで楽しい気持ちにさせるような絵柄があるに越したことはないと。

こんな時代にこんな特殊な用途の笠を買ってもらうんだから、少しでもいいなと思えるようなデザインにしようと。



今は平和な時代が訪れて役目をすでに終えた防空電燈笠。
シェードを作る自分にとってはここで終わらせてはいけないという何かを感じずにはおれません。

今こそ光を解き放つ時




    最後に一句引用

防空演習の 掩蔽灯火はひそやかに
円く区切りて わが仕事を照らす
                                    五島 美代子

コメント

人気の投稿